二重らせんの右巻き左巻きが簡単に分かる

索引

  1. 初めに
  2. 二重らせんではなく、ネジの構造で理解する
  3. 右巻きらせんはアルファベットのZで覚える
  4. 右巻きらせんの定義とは?
  5. 右巻き螺旋は左巻き螺旋にはならない
  6. まとめ

初めに

二重らせんの右巻き、左巻きを問われたときに、どちらがどちらであるか即答できるでしょうか。両者を見分けるコツが分かれば螺旋をみた瞬間に、右巻きか左巻きかを答えることができるようになります。それは、右手と左手とを見分ける程度に簡単です。今回はらせんの右巻きと左巻きとを見分ける方法を分かりやすく説明します。

二重らせんではなく、ネジの構造で理解する

日常生活でも普通にらせん構造がでてきます。最もよく現れるのはネジでしょう。ネジには右巻きのネジと左巻きのネジがあります。

右巻きのネジは、ネジの頭をドライバーで右方向、つまり時計が回る方向(clockwise、「クロックワイズ」といいます)に回したときに、ネジが締まるものをいいます。

逆に左巻きのネジは、ネジの頭をドライバーで左方向、つまり時計が回る方向と反対方向(anticlockwise、「アンチクロックワイズ」といいます)に回したときに、ネジが締まるものをいいます。

ここから重要な点ですが、右巻きのネジは、どの方向から見ても右巻きのネジのままです。当たり前ですね。
見る方向によって、右巻きか左巻きかがころころ逆転するとすれば、大変なことになります。

全部右ネジであることを確認して、ホームセンターで購入した。帰宅してから調べ直すと全部左ねじに変わっていた。こんなことはありえません。

図1は、右ねじを例示した模式図です。

図1の左端にあるネジが右ねじです。この左端にあるネジの模様に着目してください。ネジの山が、右上から左下に向かって傾斜しています。

この右ネジを上下反転させても、ネジの山は右上から左下に向かって傾斜しています。

縦方向においた右ネジを横から見ても、反対側からみても、同様にネジの山は右上から左下に向かって傾斜していることが分かるでしょう。

上下を反転させても右ネジの山は右上から左下に向かって傾斜している点は、なんだか不思議な感じがするでしょう。ひっくり返すと逆になる、という知識が、事実状態の把握を邪魔する方向に働くからです。

これは時計の針を念頭におくと受け入れやすいです。

仮に、縦方向に置いた右ネジの山の右端を、時計の針が2時(14時)を指している状態と同じ、と考えます。
一方で、仮に、縦方向に置いた右ネジの山の左端を、時計の針が8時(20時)を指している状態と同じ、と考えます。

この状態から時計の針をそれぞれ180度動かすと、8時(20時)にあった時計の針は2時(14時)の位置に移動します。一方で2時(14時)にあった時計の針は8時(20時)の位置に移動します。つまり、180度回転させた場合、時計の針が右上から左下に向かって傾斜している状態に変化はないです。

なお、時計の針がそれぞれぴったり8時(20時)と2時(14時)とを同時に指すことはない点等はご容赦ください。

右巻きらせんはアルファベットのZで覚える

図2は、右らせんを見分けるコツを例示した図です。

右らせんは、右ネジとの関係で覚えます。表面に現れているネジの山の模様が、ネジを縦方向に置いたときに、右上から左下方向に傾斜しているのが右ねじです。同様に、らせんを縦方向においたときに、手前に見えている螺旋の模様が、右上から左下方向に傾斜しているのが右巻きらせんです。

らせんを上下反転させても、横から見ても、裏側から見ても、この関係は崩れません。

らせんの手前側に見えている模様がどちらに傾いているかで、右巻きらせんと左巻きらせんを区別することができます。

図2に示されるように、らせんを縦方向に置いたときに、Zの文字と同様に、手前側に見えている螺旋の模様が、右上から左下に傾斜しているならそれは右巻きらせんです。

Zの文字の斜めの線は、右上から左下に向かっています。Zの文字はアルファベットを順次書いていった場合に、最後の右端に現れますので、「Zなら右巻きらせん」、と覚えてしまいます。

反対の左巻きらせんは覚えなくてよいです。右巻きらせんと反対、と覚えておけば十分です。なれてしまえば、螺旋の構造を見た瞬間に、右巻きらせんか、左巻きらせんかが瞬時に分かるようになります。

右巻きらせんの定義とは?

手元にある辞書で、「右」の定義を調べてみてください。広辞苑(岩波書店、第7版)では、右とは、南を向いた時、西に当たる方、との説明がでてきます。

それでは今度は同じ辞書で、「南」とは何かを調べてみます。そうすると、今度は南とは、日の出る方向に向かって右の方向、との説明がでてきます。

一方の定義に他方の定義を互いに用いているので、これではいつまで経ってもそもそも右とは何かを決定することができません。

実はこれこそが重要な点です。互いに異なる状態にある構造や方向のそれぞれについて、片方の名前を「右」と呼んでいるだけで、この「右」自体に特別な意味はありません。混線使用さえしなければ、例えば「右」のことを今日から「バー」と呼び、「左」のことを「ザー」と呼んだとしても、問題は全く生じません。

つまり、螺旋の一方の構造を右巻きと呼び、他方を左巻きと呼ぶのは、人間が勝手に付けた便宜上の目印にしか過ぎない、ということです。

「右」に優位性がある、とか、「右」の方が「左」より選択されるように出来ている、と考えるのも誤りです。右か左かは人間が勝手に付けた、両者を区別するための目印以上の意味はないです。右の方が左より優れるということもありません。実際、今日から右のことを左と呼び、左のことを右と呼んだ場合でも、一時的に多少の混乱は生じるでしょうが、あらゆる分野で根本的な問題は全く生じません。

また右巻きらせんは、なぜ右巻きなのか、と考えるのも、言葉遊び以上の意味はないと私は思っています。

右巻き螺旋は左巻き螺旋にはならない

もう改めて指摘する必要もないほどの事実ですが、右巻き螺旋を放置しておけば、自然に左巻き螺旋になる、という事実はありません。逆の場合も同じで、左巻きらせんが自然に右巻きらせんになることもありません。

特にネジの場合は右ネジを左ネジに変換する方法はありません。

いったん材料を溶かして、鋳型に入れて反対側の構造を作り直す以外に右ネジを左ネジに変換する方法はないです。

DNAの二重らせんの巻き方が、自然に一方から他方に変化する、という理解も誤りです。端点が固定されたらせんは、そのらせんのねじりを解消しようとすると、ねじり応力と呼ばれる、元に戻ろうとする力が働きます。無理にらせんのねじりを解消しようとすると、らせんそのものが破壊されます。

また人間の場合、一つの細胞の中にあるDNAを取り出した場合、その総延長は1メートルを超えます。2m近いDNAの右巻きの二重らせんをほどいて、もう一度左巻きに巻きなおして、同じ細胞の中に「もつれないように」再格納する。

たった一つの細胞についてのDNAの二重螺旋の場合でさえ、どう考えてもありえないです。

しかも細胞の数は数十兆個あります。仮にDNAの右巻き二重螺旋をほどいて再度左巻きにまき直して細胞に格納する技術ができたとしても、人工的に二重らせんの全てをほどいてまき直している最中に当の細胞は死滅してしまうでしょう。

簡単にDNAの二重らせんの全ての右巻きと左巻きが相互に変換されると考えるのは間違いです。

(注:互いに等価でない二重らせん同士の変換ならありえます。例えば、右巻きのDNA二重らせんが物理的に無理やり反対向きにねじれている場合とか。ただし存在しても不安定です)

まとめ

今日から、このブログを読んでるあなたは、らせんの右巻き・左巻きを見分けるスペシャリストになりました。
もし、らせんの右巻き・左巻きが分からない、という方が近くにいたら、ぜひ、教えてあげてくださいね。

ファーイースト国際特許事務所
所長弁理士 平野 泰弘

03-6667-0247

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